ライソゾーム病は、ここ数年、酵素補充療法・遺伝子治療など先進的な治療法の開発が進んできていますが、希少疾患であるがためにその疾患や治療に対する正しい知識は、医療関係者の中でも限られています。現実にはその診断が遅れる、または他の疾患と間違えて診断がされてしまうという状況を完全に改善するには至っていません。
そのため、昨年、新たに疾患啓発のツールとして“ライソゾーム病のしおり”の制作を企画しました。一般にしおりは書籍にはさみ、読者の利便性を目的として使用されます。私たちは、情報発信の新たなツールとして、“ライソゾーム病のしおり”を制作し、多くの人に向けての情報発信を開始しました。
しおりは、書籍にはさみ携帯される為、疾患啓発や情報発信としての効果も期待できます。また、本を読み終えるまで使用される為、長期間の持続的な効果も期待でき、無意識のうちに様々な情報を見ることになります。
“ライソゾーム病のしおり”を用いた情報発信は、無意識のうちにライソゾーム病について触れるきっかけとなり、広く疾患啓発につながっていくと考えられます。
2020年、私たちは“ライソゾーム病のしおり”を制作し、患者さん、そのご家族、医療関係者をはじめ、一般の方々にも広く配布しました。現在、既に多くの方がしおりを使用されています。今後も“Sakuraの会-Japan Art Festival”など様々な講演会や研究会をはじめ、新聞紙上などを通じて広くライソゾーム病の啓発を行っていく予定です。
特定の遺伝子異常により細胞内の酵素活性の低下をきたし、本来分解される物質が進行性に蓄積し発症する遺伝性疾患です。
ライソゾーム病は欠損酵素や蓄積する物質によりサブグループに分類され、現在、60種類以上が報告されています。
主な疾患として、ゴーシェ病、ファブリー病、ポンぺ病、ムコ多糖症などが含まれています。
監修:一般社団法人 Sakura Network Japan 坪井 一哉(名古屋セントラル病院)
疾患 | 欠損または不足酵素 | 主な臨床症状 |
---|---|---|
ゴーシェ病 | グルコセレブロシダーゼ | 貧血・血小板減少症・肝臓・脾臓の腫大・骨痛・骨症状 |
ファブリー病 | α-ガラクトシダーゼA | 四肢末端痛・心肥大・腎不全・被角血管腫・発汗障害・角膜混濁 |
ポンぺ病 | 酸性α-グルコシダーゼ | 乳児型:フロッピー・インファント・呼吸障害・心肥大 遅発型:近位筋筋力低下・呼吸筋筋力低下・高CK血症 |
ムコ多糖症Ⅰ型 | α-L-イズロニダーゼ | 特徴的顔貌・肝臓・脾臓の腫大・関節拘縮・骨の異形成・反復性中耳炎・ヘルニア(臍・鼠径)・角膜混濁 |
ムコ多糖症Ⅱ型 | イズロン酸-2-スルファターゼ | 特徴的顔貌・肝臓・脾臓の腫大・関節拘縮・骨の異形成・反復性中耳炎・ヘルニア(臍・鼠径) |
特定の酵素(α-L-イズロニダーゼ)の欠損または活性が低下することにより、本来分解される物質が進行性に蓄積し発症する遺伝性疾患です。
特徴的顔貌、肝臓・脾臓の腫大、関節拘縮、骨の異形成、ヘルニア(臍・鼠径)、反復性中耳炎、角膜混濁などの所見が認められます。
遺伝形式は常染色体劣勢遺伝です。
特定の酵素(イズロン酸-2-スルファターゼ)の欠損または活性が低下することにより、本来分解される物質が進行性に蓄積し発症する遺伝性疾患です。
特徴的顔貌、肝臓・脾臓の腫大、関節拘縮、骨の異形成、ヘルニア(臍・鼠径)、反復性中耳炎などの所見が認められます。
遺伝形式はX連鎖性遺伝です。
特定の酵素(グルコセレブロシダーゼ)の欠損または活性が低下することにより、本来分解される物質が進行性に蓄積し発症する遺伝性疾患です。
貧血、血小板減少症、肝臓・脾臓の腫大、骨痛・骨症状、ゴーシェ細胞、高ACE血症などの所見が認められます。
遺伝形式は常染色体劣性遺伝です。
特定の酵素(α-ガラクトシダーゼA)の欠損または活性が低下することにより、本来分解される物質が進行性に蓄積し発症する遺伝性疾患です。
四肢末端痛、心肥大(左室肥大)、腎不全、蛋白尿、脳梗塞、被角血管腫、発汗障害、角膜混濁などの所見が認められます。
遺伝形式はX連鎖性遺伝です。
特定の酵素(酸性α-グルコシダーゼ)の欠損または活性が低下することにより、本来分解される物質が進行性に蓄積し発症する遺伝性疾患です。
乳児型では筋緊張低下、呼吸障害、心肥大、肥大型心筋症、発育不全などが認められます。
遅発型では近位筋筋力低下、呼吸筋筋力低下、翼状肩甲、高CK血症などの所見が認められます。
遺伝形式は常染色体劣性遺伝です。